豆乳と豆乳メーカーの話

豆乳が好きです。
日本にいたころは苦手だったのですけれどね。
白いのに牛乳じゃないし、青臭いにおいがするし、
ちょっと苦味というかエグみがあるような感じがして。
しかし中国に行ってから考えを改めました。
単純に、美味しい豆乳を知らなかった自分が無知なだけであったのだと。

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カナダに来てからはさらに、考えを改めました。
豆乳は今や中国人、アジア人だけのものではなく、
北米のスーパーにも2リットル入りド迫力豆乳パックが並び
こちらの人たちにも当然のごとく受け入れられているものだと。
スムージーには通常豆乳が入っているものだと。
スタバのコーヒーのミルクを豆乳にすると若干高くなるものだと!
(健康を気遣うひとびとには
豆乳>牛乳が常識なんですねー。)

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豆乳がいいか牛乳がいいかは、色々議論があるので、
ここでそういう話に触れるのはやめておきますが、
私自身はどちらでも、そのときそのとき美味しいものを飲み
それぞれ、料理にあうものを使うものを使うようにしています。
豆乳はシフォンケーキにコクをプラスしてくれますし、
カスタードはやはり牛乳が合うような気がします。
ホワイトシチューにすると、豆乳には豆乳の素朴なやさしい味わいが、
牛乳には牛乳のクリーミーな美味しさがありますね。
スムージーにいれるのも豆乳も牛乳もどちらの味も好きですが、
でも単体で飲むとしたら、やはり豆乳かな。

なぜならば、まだカナダで美味しい牛乳に出会ったことがないからで。
カナダの牛乳ってなんかうすくないですか?
常々、濃いリッチな感じの新鮮な牛乳が飲みたいと思っていたので、
Milk Farmのオープンハウスがあると聞きつけて嬉々として出かけたのですが、
どんよりとした焦点の定まらない目をした牛たちが、
牛舎の中で惰性で生きているのをみせつけられて
愛すべきものよ、牛よ、ゆるせと私は叫びましたよね。(『乳しぼりの歌』より)

(うちの子が、まだ4才くらいだったんですが、
牛舎に入ったらみな目がイカレタ牛たちばかりだったので、
見てはいけないものを見てしまった😮😮😮😥、
という表情をしていたのが印象的です。)

というわけで、正直言ってカナダで牛乳を飲むのに多少ためらいがあります。

一方、豆乳はというと、、、
Silkとか、So Goodとか気軽にスーパーでも美味しい豆乳が手に入りますが、
中国のそれとは、豆乳の濃さと味が違うような気がします。
T&Tなどの中華系スーパーでは、それらしい豆乳が買えます。
ただ、飲み続けると、私の場合、喉に異変を感じます。
何の成分に反応しているのか分からないのですが、
イガイガちくちくかゆみを感じます。

そんなこんな色々あって、しかたがないつくってみよう、となったわけです。
(必要に迫られないとできない、このモチベーションの低さ)

で、何回か作ってみたのですが、、、

これが、なかなか面倒くさい。。。
豆を水に浸して、
それからフードプロセッサーで細かく粉砕して、
それから煮て、漉して、という作業で、結構時間がかかるんです。
そして、どろどろと濃いわけです。
カレーもそうですけど、気づいたら底が焦げ付いていて、
カレーに必要の無いスモーキーフレーバーがついちゃった、
みたいなことってありますよね。
なので燻し豆乳にならぬよう、ずっと見守っていないといけない。

数時間、下手すると半日かけて豆乳と蜜な時間を過ごすのであれば、
その分遊びた、、、いや、子供を見守っていたほうがいいよね、と夫と相談して、
豆乳機を手に入れましたのでした。

それからは、もう、毎日作りました。
だって、美味しいんですもの。イガイガもしないし。
豆のコンビネーションなど色々試して、
マイベスト豆の乳ができたので、
もう、普通の豆乳じゃ満足できない体になってしまいました。

周りの友人を家に呼び、とにかく飲んでみなさい、と美味しいから、
とスーパーの試食販売のおばちゃん顔負けのいきおいで
売り込みましたよ。
そしてなんと、、、試飲した全ての皆さんが何らかの形で手にいれられました。わぁ。。

私は中国の九陽(Joyoung)という豆乳メーカーを使っています。
中華系の友人で、豆乳メーカーを買ったものの、使わない、と言う人は
たいてい洗うのが面倒、というのがネックになっていたようですが、
フィルターと本体が一体型になっていないタイプのものを買えば、
洗うのも楽です♪

中華系のスーパーや、モールに行けば売っていると思います。

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私のはこういった感じで、すごい使いやすいです。もう4年以上使っていますが、壊れる気配はありません。
アマゾンで似たような機能のものをみてみたら、値段もそう悪くないですね。

JOYOUNGのこれとか、よさそうですね。

さてさて、肝心の材料となる大豆ですが、
私はオーガニックか、遺伝子組み換えをしていない豆を使用しています。
豆は中華系スーパーか韓国系スーパーで買えます。
わたしはそれに、
黒豆、カシューナッツ少々、(あれば)ピスタチオ少々を入れています。
水で浸して戻してから豆乳機にいれて、線のところまで水を加え、
ポチっとボタンをおすと、あとは任せておけば、
15分ほどでおいしい豆乳のできあがりです。

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そのまま飲んでもいいですが、わたしはざらざらした食感が気になるので、
付属のフィルターでろ過して、おからを取り除き、
砂糖を少々入れて飲みます。
まろやかで、奥行きのあるとっても美味しい豆乳です。

豆乳メーカーを買ったら、ぜひ試してみてくださいね!

🐮🐮🐮🐮🐮

本文にでてきた一節は
火星探検を書いた戦前の漫画家旭 太郎こと小熊秀雄の乳しぼりの歌です。
手元に全集がないので、青空文庫から転載しておきます。
(豆乳がメインの話なのに、乳しぼりの歌をのせるのが、わたしです。
おいしい牛乳も飲みたいなぁ)

乳しぼりの歌

とばしり出るものの為めに、
讃歌をうたへ
白きものであつて、且つ甘きものの為めに
牛よ、お前はよく食ひ、よく眠る、
熱心に反芻し、
そしてありありとお前の額には、
苦痛の色を漂はす、
私はお前を、いとしいと思ひ
もし私が柔らかいお前の乳房にふれることが
どんなにお前に苦しみを
与へるだらうかとさへ思つた、
私には爪があり力が強かつたから
時には乱暴にしぼることもあつたから――。

私は観念し
泣きながらお前の乳にしがみついた
私の職業は乳しぼり、
お前の額をブン殴る
牛殺しと五十歩百歩の私
愛すべきものよ、牛よ、ゆるせと私は叫んだ、
お前の膨大な暗黒な体の下にかがまり
ニュームの容器を
腹の下に置いてしぼりだすと
乳は容器を鳴らして雨のやうな音をたてた、
最初は、タンタラ、タンタラと小雨のやうに、
やがては嵐のやうに――。
私は職業を恥ぢた、
生活とはこのやうなものか、
現実の乳しぼりとは、このやうなものか、
お前の暗黒の体内から
白い甘いものをしぼり
出さなければならないかと
ながいこと、私は自分の仕事に苦しんだ、

ある時、私はお前のとばしり出る乳を
顔にかけられて
私は乳をもつて眼を洗つた、
すると私の眼はパッチリと冴え
一切の周囲が
思ひがけない喜びに満ちた世界に見えた、
私は驚ろき太陽は燃えたち、
草はまつすぐに、生気があり、
雲雀は歓喜の歌をうたひ、
其処には宿命的なものは一つもなかつた、
曾つて卑しい苦痛の生活と思つた
乳しぼりの友達は
喜びをもつて、牧舎から出てきて
日課を完うしてゐた、
板囲ひを修繕してゐる大工も
牧場の路をつくつてゐる土工も
すべての労働者は元気があつた、
しかも牛達の声は高く
その大きな乳房を露出(むきだ)して
――今日もしぼれ、
明日もしぼれ、
あさつてもしぼれ、
私は草を食はう
乳を貯へるために――と
私にむかつて牛は優しく元気づけてくれた、
私は感動をもつて、この永遠の乳房に取つつき、
熱意と、熟練とを確信し
はげしくとばしり出る甘いものを
我々のための我々の乳をしぼり始めた、
かつて苦痛であつた仕事が
このやうに喜びをもつて為されるといふことは
ただ、あやまちに乳をもつて
眼を洗つたためだけでは無いであらう、
それは私がこれまで余りに生活の
小さな影に居たからだ、
運命が私に乳をしぼらせてゐたからだ、
いつも乳をしぼる私は
牛の体が太陽の光りをさへぎつてゐたから、
現実とは――牛のやうに何時も
悲鳴をあげてゐるものと考へ込んでゐたから、
晴々とした、宇宙の中の牛よ、
私の乳しぼりよ、
眼をあげよう、
若者よ、
確信をもつて現実からしぼらう、
――今日もしぼらう、
明日もしぼらう、
我々の為めの我々の乳を――