自己紹介その3

少し私の生い立ちをお話ししますと、

大学卒業まで日本で普通に少し変わった人間として
いきづらい毎日を過ごしていましたが、
22歳で人生の方向転換をし、
中国留学を経て中国で働き始めました。

思えばこの中国時代が私の料理の歴史のあけぼのといえるでしょうか。

留学中に最初に作った料理らしきものといえば、
日清シーフードカップヌードルの汁で作った炊き込みご飯なのですが、
何気なく其の話を留学仲間にした時にぽっかりとあいた3秒ほどの間を、
私は生涯忘れることはないでしょう。

同じく留学中に、シチューをふるまう!と宣言すると、
心配だからと調理現場を見に来た18歳童顔の井上君に、
「灰汁とらないんですか!」と言われて、
「し、知ってるよ」、とごまかしました。
今でもシチューを作るときに、
井上君のにやついた顔がちらちら思い浮かぶのですが、
わたしの料理歴史上で縄文時代から弥生時代への幕開け位の影響をもたらしたことは彼自身つゆとも知らないと思います。

中国で働きはじめてからは、
日常的に美味しいものを口にするようになりました。
自分で作ることは少なかったですが、
この期間はなんというのか、
舌の経験値が上がりました。
香菜や八角、花椒、加えて各種漢方の生薬など、
今まで私の文化圏内に無かったものを受け入れられるようになって、
一気に世界が開けたようでした。
kanpoyaku

とはいへ、
実際に自分で美味しいものを作りたいと強く思うようになったのは
結婚してカナダに移住してからです。
なぜならば、
第一に気軽にレストランに入れるような経済状況に無かったこと。
それから、
仮に外で食べたとしても満足感が非常に低かったからです。
夫は台湾人。
カナダという異国で頼れる親戚もなく、
家の経済を支えるために孤軍奮闘してくれていましたので、
なんとか彼のためにも美味しい料理を作りたいと思い、
実際わたしには時間だけはありましたので、
台湾/中国現地のレシピを集めて片っ端から作っていきました。
中国での舌の記憶を頼りに、
また夫の口にあうように少しずつ味付けを変えては試していきました。

(続く)